写メ日記 | 寒牡丹

寒牡丹

2018/02/18 00:38:20

元の末、方谷孫は淅東を占領し
毎年 陰暦旧正月15日から五日の間は
明州府の城内に元霄燈を掛け連ねて
諸人に見物を許していたので、その
宵々の賑わいは ひと通りでなかった。

元至正の旧正月17日、鎮明嶺に
住む 喬生という 若くして妻を喪った
男やもめは 心寂しく、宵にも燈籠見物
に出掛けるでなく 我が家の門に佇んで
虚しく往来の人々を見送っていると、
夜も三更(深夜2時) 人影も稀になった頃
髪を両輪に結んだ召し使い小女が
牡丹燈を掲げて先に立ち、翠袖紅裙の
衣を着た年の頃十七、八の女を案内
して来た。
月光に窺うと 女は国色随一の美人
で 神魂飄蕩、我にも非ず浮かれ
追って行くと、女は拒む色もなく、
甚だ うちとけて身の上を明かした。
「私の姓は符、字あざなは麗卿、名は
淑芳と申しまして かつて奉化州の判(高官)の娘でございますが、父は先年 世を
去りまして家財も衰え、他に親戚も少ないので この金連と只ふたり月湖の西に
仮居を致しております…」
その一夜を喬生の宅に明かし夜明けに
女は立ち去ったが、日が暮れると再び
金連小女が 牡丹燈をかかげて案内来る
のであった。
半月後、隣に住む老翁が疑いを起こし
覗いてやると 紅や白粉おしろい を
塗った骸骨が 喬生と並び 灯火の下、
睦合っていた。
驚愕した翁は翌朝、 喬生を嚇し詮議
すると 喬生は早速に月湖の西へ 訪ね行き
辺り隈無く捜し歩いたが 麗卿の仮居は
見当たらず、 土地の者も聞き及ばず、
疲れはて 畔の 湖心寺なる 古寺に入り
休息とらむと 回廊を さ迷うと西廊の外れに 薄暗き室あり。
そこに一つの旅棺(旅先で客死した者を蔵めたまま寺中へ預け 時期を待ち故郷へ持帰り 葬る訳或る為 古来様々な怪異がある)が安置してあった。
その旅棺の上に白い封印が貼ってあり
「故人 奉化州判符娘 麗卿之柩」
と記しあり、棺前には見覚えある
双頭の牡丹燈を掛け、燈下には人形の
侍女こしもと が立っており 人形の
背中には 金蓮 の二文字が書いてあった。
それを見るなり喬生は俄に ぞっと、
肌粟立ち 慌てて逃げ帰った。
直ぐ翁と共に 玄妙観魏法師を訪れ
その座下に拝して、かの牡丹燈の一条
を訴えると
「急急如律令、もう寸刻の容赦もない
民を謚い 祟り憑き 惑わし個条に違い
犯した罪によって 牡丹燈を焼き捨て
彼女らを 九泉の獄へ送る 」

法師は二枚の朱色の護符をくれ、
一枚は門に貼れ 、他一枚は寝台に貼れ
そうして今後 再び湖心寺に近寄るなと
言い聞かせた。
その通り 朱護符を貼っておくと
牡丹燈の影も見えなくなったが
一月後、行方不明となった喬生は
湖心寺の柩中で彼女の亡骸と折り重なり
死んでいるのを検められた。
男女の死骸を蔵めたまま棺を寺の
西門に埋めると
魏法師は いつの間にか 聾唖になって、
口を きくことが出来なくなっていた。


剪灯新話「牡丹燈記」
瞿佑 宗吉 (く・そうきつ)
1368~98
岡本綺堂 編訳


三遊亭圓朝の「牡丹灯籠」の元ネタ
綺堂先生は「半七捕物帖」シリーズが
好きw

⛄🌁また寒ぅなったのう〰😵😨