写メ日記 | 桜

2018/03/30 16:13:12

三百年の昔、
伊予の国温泉郡 朝美村に
徳兵衛という善良な庄屋が
住んでいた
界隈で最も裕福で 村長むらおさ
を勤め、 大概には不足ない身分
だが 四十歳にとどいても 未だ
父親になる喜びを知らず居た
そこで 徳兵衛と彼の妻は
子宝に恵まれないのを苦に
病んで朝美の西方寺という
名高い寺の本尊である 不動明王
に度々 願をかけた
ついに満願 叶って妻は一人の
女児を生んだ
健やかで たいそう愛らしい子は
露 と名付けられ、お袖 という
姥が 乳母に雇われた
お露は成長して 縁談余多の
美しく 聡い娘になったが
十五の春に 重い病に罹かった
医者達も到底 助かるまいと
匙を投げたが 乳母のお袖は
西方寺に詣でて お露の為に
真心込めて 不動様に二十一日間
毎日 祈願した
果して 満願の日に お露は急に
全快した
徳兵衛の家中は大喜びで 快癒祝い
に村人知人親族残らず招いて宴を
ひらいた
ところが その祝いの晩、姥のお袖が
突然 倒れた
翌朝 医者達は臨終が迫っていると
告げた
家中の者は悲嘆にくれながら 別れを
告げに、お袖の床の周りに 集まった
お袖は 嘆息ながら言うに

「皆様方の御存じないことを、申し
上げねばならぬ時が まいりました
実は 私くしの祈願が聞き届けられた
のでございます… 私くしは お露様
の御身代わりに、召して下さいます
よう お不動様に お願い申しました、
そうして この特別のお情けを お授け
下されたのでございます…
かような訳でございますから、どうか
皆様、 私くしが死ぬのを お嘆き下さい
ませぬよう …されども、ひとつだけ
お願いが御座います… 実は満願御礼
の証しに、桜の木を 西方寺の境内に
奉納致しますと、お不動様にお誓い
申しました …もう 私くしは 自分で木を
植えることは 出来ません …
どうか 私くしに代わって、誓いを
果たして頂きとう存じます…
それでは皆様、これで 御別れで
ございます…どうか々 私くしが、
お露様の御身代わりに 喜んで
死んでいったのを お忘れ下さいますな
…」


お袖の葬式が済んでから、選り抜きの
立派な 桜の若木が お露の両親の
手づから 西方寺境内に植えられた
その桜木は生長して生い茂り 翌年
三月三十日(旧暦 二月二十六)
ちょうど お袖婆やの命日に 見事な
花を咲かせた
こうして後 二百五十年余りの間
毎年 命日 三月末に絶えることなく
皆の観覧を呼んだ
その桜は 石竹色と白とで、まるで
女の乳色の様なので 巷の人々は
乳母(姥)ざくら と呼んだ


1896年 明治29年
ラフカディオ・ハーン
「怪談」


🌸
不動尊に延命の願掛けしたら
アカンよなぁ
弁財天に 恋愛成就 祈願も
祟られるいうしなぁ
これ 後日談あったけ
結局 娘さんは…

🌸🌸
今日の貼photo
近所の公園の桜並木
満開 ✨🌸🌸🌸